→狐恋様(ここさま)←
……今更後悔してもこうなったのは仕方ない事だ。そう自分に俺は何回も言い聞かせる。そうだ。あれは遡る事1時間前。
「んじゃまたな。」
「明日は遅刻するなよ。」
まだ中学1年生で未熟だから自慢はできないが俺は剣道部に所属しており、そこでできた「田原 陸都(たはらりくと)」という友達と家に帰っていた時の事だ。途中で陸都とは別れた。その後が重要だ。箱に入っている女の子を見つけた。しかもその箱はみかんと大きく書いてあるよく漫画などでもみたりする捨て猫が入れられている茶色の箱だ。その中にいるのは決して猫なんていうかわいい生き物ではなく、人間の女の子だった。見た目からして歳は10歳くらいだろうか…。俺は今更目を疑った。なんでこんな道端にこんな女の子がいるんだ…と。俺がじーっと歩くのをやめてみていると少女と目があった。
「おい、そこのお前。今私と目があったな。」
指をピシッとさされる。指先はしっかり俺へと向かっていた。
「…え?俺ですか?」
耳と目を疑う。今、お前って言ったよな、それと指先、俺に向かってないか…?
「お前以外に誰がいる?阿保か。ちと話を聞いてはくれぬか。」
「は、話…ですか?」
「あぁ。妾は狐恋だ。人間には狐火神と呼ばれている。」
人間?この少女はどこか頭を打ったのだろうか。確かに服装は巫女さんっぽくて、耳と尻尾がある。どうせ何かのアニメのコスプレだろう。
「で、コスプレでどこか行くんですか?道に迷ったんですね?」
「道が分からぬわけではない!迷子でもない!妾は狐恋じゃ!お前…、やっぱり阿保なのか!」
そう言って一人で納得するその少女は自分を先ほどから狐恋と名乗っていた。どこかで聞いた事あると思えば、俺の親父のやっている神社の神様の名前だった。
「神様のコスプレでしょうか?」
「ちーがーうーぞー妾は、妾は、こすぷれなどしておらぬ!この無礼者め!成敗してやる!」
彼女が手を広げるとそこで青白い炎が現れた。
「覚悟しろよ、小僧。」
少女は俺を見て、にやりと笑って見せた。