【プロローグ 〜開店〜】
春。隣に広がる海の風に乗せてふんわりと春の風が私のところにやってくる。
また、この町にやってきた。
少しベタベタするけど気持ちのいい海の風。いつもおいしいパン屋さんのあま〜い香り。遠くにそびえる山々。
何もかもが懐かしくて、私は微笑んでしまう。昔と何も変わらないことに。
私は足を進めた。「この道も、昔と変わらないな・・・」とか「ふふっ、ここでよくあそんだっけ」とか
思いながら。少し歩くと小さな路地に入る。
私は、ワクワクしながら草木がボーボーに生えているところを手でよけながら進んでいった
すると視界に自宅が目に入った。
―懐かしい。
少し涙がこみ上げてきた。
そして、ぼやけた視界に3人の少年少女が立っていた。
「「おかえり。つぼね!」」
「うん!ただいま!!」
その少年少女は私の幼馴染だった。
わたしは立っていられないほど泣きじゃくった。これは、うれしさの涙だ。
泣くと同時に、これからどんな未来かもう決まっているような、そんな気がした。
もちろん、その未来はきっと”たのしい未来”だろう・・・とおもいながら。