第1話[腐れ縁とオムライス]-NO.2-
―ああ、そうだけど。
―忘れたのかよ。幼馴染の篠原尚吾だよ。
―まぁ、今すぐには思い出せねぇかもだけど、少しずつ思い出してくれればいいぜ。じゃあな。
尚吾の声が無限にループしている。
この間から3日、1秒たりとも途切れないこの声。
まるで、恋する乙女のように顔さえも頭から離れない。
「もうっ!!なんなのよ、じぶんっ!」
おもわず、こえが出てしまった。
―こんな自分を抑えるのに精一杯でレストランどころじゃないよ・・・
そして、なぜか今までの自分が見えてきた・・・・・・。
今よりも1週間まえ。
◆◆◆
「パパ〜!!これ捨てていい〜?古臭いし、なんか、ダサい・・・し・・・」
わたしは、古ぼけたキッチン用品を見つめながら言った。
「だめだよ〜〜〜!!!それ、いつかまたレストランを始めるときに〜、ってとっておいたんだから。」
「ふ〜ん。」
パパは一生懸命大切そうにキッチン用品をしまった。それだけ大切なのだろう・・・
今までにないくらい家の中はほこりだらけだった。
「意外と広かったんだね〜!!2Lの小さなアパートだと思ってたからさ〜!!」
「お母さんもびっくりよ〜〜!!こんなに広かったのね!・・・あっ!そうだわ、今までお世話になった家
なんだから、お礼を言いましょうよ!!きっと、家の神様が微笑んでくれるわよ!!」
「家に神様っているのか・・・?まず、、、。」
「きっといるわよ!どこかに・・・!」
「そうだね!!じゃあいくよ〜〜!せ〜のっ!!」
『『『今日という日まで住ませていただき、ありがとうございました!!!!!!!!』』』
「よしっ!!!日本へ向かうぞ!!」
パパは大きなボストンバックを抱えて、玄関を出た。
わたしは、敬礼のまねをして、
「ラジャ〜〜〜!!」
そう叫んだ。何もない家に響き渡った。
今から、新しいときがはじまるんだ!って思うと心がわくわくした・・・。
第1話[腐れ縁とオムライス]-NO.2- おしまい
次回 [腐れ縁とオムライス]-NO.3- お楽しみに!!