私の独り言だったはずなのに、いつから隣にいたのか分からない依与吏が問いかけてきたのだ。
それに応えようと口を開くも、その《分からない》理由を説明出来ない。いっそのこと本当の事を聞けば楽になるのかもしれないけど、そんなことが出来ればこんな状況にはなっていない。
開いた口を閉じて、視線を下に向けた。
目前に広がるのは道路と自分の靴だけ。
こんなあからさまな態度を取ったら余計に依与吏に怪しまれるって分かってるのに、あからさまな態度を取ってしまう。
好きな人が隣に居て道を歩くのは嬉しいことなのだろうけど、今の自分にはそれさえ嬉しいのか嬉しくないのか判断が出来なくなってしまった。
小さい頃の結婚しようって言う約束で悩んでいるって知ったら、依与吏はどう思うのだろう。
まだそんなこと覚えてたんだ、何て言うのかな。
それとも・・・。
「・・・で、かえで、楓!」