私を呼ぶ依与吏の声に、私は顔を上げた。そこには困ったような顔をした依与吏の顔が在る。
「ごめん、考え事してて」
心配させないように作り笑いを浮かべ、依与吏の顔を見る。
「そっか。まぁ、困ったことあったら俺に言えよ?」
私の肩をポンって叩き笑いかけてくれる依与吏。
昔から気の使い方だけはいいんだけど、依与吏は恋愛系の事には本当に鈍い。
私は依与吏の言葉にうなずきながら思った。
家に帰ると、いつもは置いていない筈靴が置いてあり、お客さんが来てるのかな、と判断した私は靴を脱いでリビングに続く廊下を歩いた。
リビングには私の予想通り、お客さんが来ていた。そのお客さんは、私のもう一人の幼なじみで兄のような存在である連志くんだった。
「連志くーん」
私は名前を呼びながら連志の元へ駆け寄り、抱きついた。