主題となる話を始める前に、少し、くだらない話をしようと思う。それは、僕の一人の友人の話だ。
真辺さだめ――若干変わった名前をしているが、それ以外は何の特徴もない――こう言ってはいけないかもしれないが、至って平凡な女の子だ。
性格は温厚。
容姿も特別美麗というわけでもない。
成績もそれなり。
運動は少しばかり苦手。
そう、本当に、どこにでもいそうな、ありふれた形の人間だ。ある、ひとつの点を除いては。
先程の発言を、ひとつ訂正しよう。そんな彼女と、僕は特別親しいわけではない。友人ではない。そのこと――僕と彼女の関係が、彼女が他の人間と違うことを、示している。
彼女、真辺さだめは、誰にでも優しい、のだ。
誰に対してでも対等に接し、悲惨な姿の動物でさえも、可哀想だ、自分より下だ、と考えることはない。
僕もきっとその内の一人だと思う。彼女の優しさにより救出された、実際は哀れな、人間。
ここまで聴くと、まるで僕が彼女のことを知り尽くしているように思えるが、これは、全て僕の一方的な考えだ。
言わば、彼女がこうであって欲しいという押し付けだ。
だから、今の話は気にしないでいてほしい。
物語の本題は、これからだから。