十字架の記憶

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3:歩未:2015/12/28(月) 15:01 ID:A7U

遠くで機械の電子音が聞こえる。
ゆっくり目を開けると眩しくて何も見えない。
しばらくして目が慣れてくると自分がどういう状況かが分かった。
まず口に酸素マスク、右腕に点滴の針、左手の人指し指に血圧を測る機具、枕元に心電図があった。
体を起こそうとするとお腹に激痛が走った。
体を起こすのは諦めて自分が何故こうなったのかを思い出そうとするが、思い出せない。
必死に考えていると部屋に看護師がやって来てびっくりした顔で部屋を出て行き10分位して医者を連れてやって来た。
酸素マスクを外され、医者の名前を言った。

「主治医の竹田です。ここが何処だか分かりますか?」

「...病院?」

と小さな声で答えた。
すると竹田は

「あなたの名前を教えてください。」

と言われたそこで初めて気付いたのだが自分の名前が分からないのだ。

「...分からない。」

と言うと竹田は驚いた顔で他にもいろいろ聞いてきた。

「じゃあ、出身地は?親や知り合いのの名前は?家の住所や電話番号は?今まで何処に住んでいた?働いていた会社や店は?何処の小学校、中学校、高校を卒業した?」

でも、どれも思い出せないし答えたられないから。

「...分からない。」

と言うと竹田は脳の検査をすると言って検査したが異常はなく検査が終わったあと警察官が来て竹田と同じ事を聞いて来たが分からないとだけ言った。
警察官は行方不明者リストなどを調べてみると言い帰って行った。
看護師から言われたのだがお腹をナイフで刺されて海に落ちたんじゃないかと言われたが思い出せないから分からない。
それからしばらくたっても何も思い出せないからカウンセリングをした結果、記憶喪失だと言われた。
主治医の竹田はノートとペンを渡して

「何か思い出したりしたら、ノートに書いてください。思い出せなくてもノートに書いてください。何か思い出せるかも知れませんし。」

と言われた。
とりあえずノートを開いてみたが特に何も思い出さない。
何気無くコップの中の水を見るとキーンと耳鳴りがしだした瞬間、

『水の中にゆっくり沈んでいく』

という記憶が頭の中に広がった。
その事を早速ノートに書こうとしたが何処か特定できる場所などではないからあまりヒントにはならないのではなどと思いながら夕日が沈んで行くのを感じながらノートに書いた。


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