桜舞学園 _

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2: とある 人 :2016/01/09(土) 05:01 ID:1eE




「 ___咲 , 」

トン, と軽く小突かれた。
振り返るとそこに居たのは双子の弟の咲夜。

「 …勝手に行かないで,」

小さく呟いた彼はそっと私の隣へと並ぶ。
口をパクパクとあけて喋ろうとするが声が出ない。


私は いつからか声が出なくなった。
自分でも原因はわからない。
病院に行くと 『 かなりの精神的ダメージで こうなったのかもしれない 』 。 そう言われた。

だから私は メモ紙に 《 ごめんね 》。
そう書いて彼に見せる。
彼はふぅ,と 息を1つ吐いては苦笑いし ,

「 うん, … じゃ , 俺B組だからさ 」

そう言って歩いて行った。
咲夜とは クラスが離れてしまったのだ。
私はD組で咲夜はB組。

__少しだけ不安だった 。
今までずっと一緒で,自分の言いたいことも言ってくれていたのに。
彼が離れていくのが少しだけ悲しかった。

でも,今日からは変わる。
そんな気持ちで教室の扉を開けた。


* * *


ガヤガヤとする 教室の中 , 隅っこの席に座る。
女子出席番号5番 . 一番後ろで窓側の席。
青い空を見上げ, 安息を漏らす。
そんな時,隣の椅子が動いた。

「 … …? 」

軽く目を向けると制服を着崩した柄の悪く体格の良い男の子が座っていた。
耳にイヤホンをして音楽を聴いている。
座り方もだらしなく, 不良の様で少しだけびくりと肩が揺れた。
私が見ていることに気づいたのか彼も此方に視線を向けてきた。

「 __ なんだよ 。 てめェ。 」

軽い舌打ちと共に吐き出される低い男の人の声。
声が出ない私は震える手で文字を紙に書く。

__つもりだった。

だが彼は私の腕を掴んで
「 てめェ, 馬鹿にしてんのか!? 」
そう言ってきた。
ひ ッ, という声は出ず思うことしかできない。
どうしたら良いのかわからない時,周りを見渡すとクラスの人の視線が集まってた。

だれかたすけて , そんな声も出ない。


「 おい 」

ふとその声の先に視線を向けた。
跳ねた黒髪。黒い猫目。
着崩し気味の制服に, ズボンのポケットに手を突っ込んでいる男の子が私の目の前の男に声をかけた。

「 ンだよてめェ!! 」
男はキレ気味で返す。
彼はその男を見ても怖気つくことなく言葉を続けた。

「 邪魔、お前の声でかいし。つか,そこ俺の席 」
私の隣の席を叩きながら彼はそう言った。
チッ,と舌打ちをしながら男の子は違う席へ移動する。
クラスの人の視線も集まらなくなった。

「 …大丈夫か,?なんで言葉返さねえの 」
席に座った彼は此方をじっと見てくる。
新しい紙に文字を書く私を見ては彼は首を傾げた。

《 喋れないの 》

そう書いた紙を見せると彼はそっか,と頷いた。


「 名前, なんていうの 」

《 上島 咲 》
彼に聞かれたことを紙に書いていく。
「 うえじま さき , うえじま …じゃあ 咲で いいよな 」
彼は私の名前を覚えたのか呼び方を決め, 軽く笑った。
「 俺は 霧也 。黒野 霧也。 」
自分の紹介をすると彼は手を差し出してきた。
その手に自分の手を重ねる。

「 よろしく, 咲 。 」


____これが 霧也くんとの 出会いだった 。


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