〜第一話〜
「面白いお話だね」
私は素直な感想を口にし、本を閉じた。
「それね、昔……あなたが書いたお話なのよ」
お母さんはベッドに寝そべりながらこちらを見て笑顔を作る。
……そんな、無理して作る笑顔なんて見たくない。
お母さんは本当に笑うのが下手だ。
「ねえ…蓮花は、どんな気持ちでそのお話を書いたのかしら?」
お母さんは呑気なことを言う。
知らないよ、だって私に昔の記憶なんてないもの。
分かるはずがない。
「私ももうすぐ死ぬのかー…
その本も、私と一緒に天国に持ってきてね」
もう、やめてよ。
そんな縁起の悪いこと……
「生活費はお父様が用意して下さるわ、心配しないでね」
違う………そうじゃない!
___私には、お母さんが必要なんだ。