「よ」って何なの、、
-序章-
---昨晩、東京とないにあるヴェルトラル所有の建築現場で、三回にわたり鉄骨が崩落しました
テレビから流れるニュースに、赤実枝乃は耳を傾けていた。一方で携帯電話に向けていた顔をテレビに向けると、「めんどくさいなぁ..」とため息。
その言葉に応えるように、扉の方から声が聞こえてくる。
「枝乃さんですら面倒なんて、どんな案件なんですか」
少々からかうように言われ、枝乃はそちらに目を向けた。
そして、扉にもたれかかって不敵に笑う元後輩を据える。
「ニュースでやってる建築現場、私たちとヴェルトラルの共同建築なの。煌々会は表の世界じゃ言うほど知れてないけど、そろそろ警察も来るんじゃない?」
簡潔に言うと再び携帯電話に目を落とし、少し操作してから誰かへ電話を掛ける。
聞きなれた音が二回響いたほどで相手は応答したようだ。
「もしもし、楓? 辰次くんと一緒にヴェルトラルに行ってくれるかな。 うん、紅い子たちなら使っていいよ。ただし、楓は会議に出るだけね。辰次くんたちは送迎と護衛。 んー、そうだね、今日は空いてるはずだよ。 よろしく。」
一分ほどで用件を伝え終わると、今度は元後輩に向き直り、「そこ、よけなよ」と警告する。
本人は一瞬疑問符を浮かべていたが、もたれていた扉が開け放たれると、「ひゃっ」と声を上げ転倒した。
開かれた扉から室内に進入したのは、二人の男女。
そのうち長身の男は転倒する女性を見下ろすと、「何寝てんだ?」と天然っぽい一言を発す。
対する女は、「正文が思い切り開けるからでしょ」とツッコミをいれる。
その様子を眺め、枝乃は口を開いた。
「や、よく来たね。とりあえず座りなよ」
そう言って、正面の机の三面に配置されたソファの一つを指差す。
男女は頷くと枝乃から見た左のソファに腰掛ける。
「尋くんと聖王の人たち、何か接触あった?」
枝乃の質問に、女は首を振る。
「現時点じゃ何も。昨日エミリアさんと接触したくらい」
「そう。エミリアはなんて?」
「特に何も。尋とは最近の政治について話してました」
「変わらないねぇ、尋くんは...」
ふと、ボーッとしてどこか昔を懐かしむ枝乃。
元後輩はそれを見てため息を溢し、「枝乃さんだって変わってないですよ」と呼びかけた。
「言うじゃん、明日香」
枝乃はニヤリと笑うと、「とにかく」と話を区切る。
「皆、引き続きバレないよう、よろしくね」
凛とした声に、その部屋にいた誰もが黙って頷いた。 end,
とりあえずフルネームが出た人のみ読み方書いておきますね
·赤実 枝乃 (あかざね しの)