-第一節-
「やれやれ、夏は暑いな」
「今更だろ」
柊悠哉の呟きに、洞谷兵太朗は鋭いツッコミをいれる。
悠哉は苦笑すると、
「そんなことより、ナイトバーツはどう? そろそろ動きそうかな」
兵太朗は首を振る。
「あのリーダーは慎重でな、本人を出向かすことは無理がある」
「んー、それじゃあ、もうちょっと待とうか。ところで、そっちはどうかな?」
顎をクイと動かして、兵太朗の近くの椅子に座る少女を指名。
本人は無表情で立ち上がると、淡々と報告を述べた。
「確認できる範囲で父に不穏な動きはない。PC上にもそれらしいものはなかった。恐らく、全情報は本社にて管理されてる」
少女が着席すると、悠哉は困ったように唸る。もっとも、その表情は一切困ったようには見えないのだが。
「さすがに全部の駒は取れないか....。ま、あいつらは煌々会とでも組んで排除しますか」
「ああ、奴等はそのうち動くはずだろう。だが....」
悠哉の言葉に応答した兵太朗は、そこで言葉を詰まらせる。
それを代弁するかたちで悠哉は口を開いた。
「赤実枝乃が協力してくれるのか、でしょ? そこは状況、あいつらの頭のイカれ具合さ」
得意気に笑いつつ明るい口調で告げる悠哉。
対照的に先程の報告から沈黙を貫いている少女は、重いため息を吐いた。
「おや、どうしたのかな、老けるよ?」
茶化すように悠哉が言うと、少女はジロリと悠哉を睨む。
大人でもたじろぐであろう威圧感に兵太朗は苦い顔を浮かべたが、悠哉は依然として態度を変えない。
「うるっさい人害。あいつらよりお前の方がよっぽどイカれてるから」
「あ、そんなこと言っちゃうか。16歳まで育ててくれた親を殺そうとしてる人がねぇ..。うんん、世も末だね」
満面の笑みを浮かべて少女を煽る悠哉。
傍観者の兵太朗は、完全にこの少女は激昂と思っていたが、実際はそうはならなかった。
「お前とわたしじゃ、価値観が違う。でしょ?」
対する悠哉は、「面白いなぁ」と囁くと、
「全く持ってその通りだね」
と、両手をヒラヒラさせて踵を返した。
一旦止めます
次もここの続きからですー
-名前
·柊 悠哉 (ひいらぎ ゆうや)
·洞谷 兵太朗 (どうや へいたろう)