気づけば漆黒の空間にふわふわと浮かんでいた。
上下左右、何処が何処なのかさっぱり分からないような場所で、浮いている自分がとある場所を一点に見つめている。
その視線の先には女がいた。
女は見えない床でもあるのかぺたりと座りこんでいて、十二単を纏い足元以上までに伸びる長い黒髪と、まるでどこぞの時代劇に出てきそうだった。
泣いているのか肩が小さく震えていて、後ろ姿がやけに小さく、悲しく映る。
夢の中の自分は何もしようとはしない。ただそこでふわふわと浮いているだけだ。
ゆらりゆらりと視界が歪み始める。
夢が終わる直前、誰か……恐らく女の声が、強く頭に響いた。
<<思い出して>>