「貴女なんて、誰からも愛されないの よ。
恨むなら、貴女を置いていった両親 を恨みなさいね。」
記憶にあるかないか。
物心ついていたのか定かでないけれど、何故かこの言葉だけは覚えている。
いや…、正しくはこの言葉と、あの冷たく鋭い視線。
私が幼い頃、事故であっけなく両親は逝ってしまった。
よくある飲酒運転の車との交通事故。
よくあってはいけないことだけれど、それで両親は帰らぬ人となってしまったのだから。
普通だったら、飲酒運転の運転手を憎み恨むのだと思う。
幼すぎて覚えていないのだから、両親のいない悲しみにも暮れず、相手への怒りすら込み上げない。
『冷たい人間』
確かにそうなのかもしれない。
でもね、「愛」を知らないのだから、暖かさも何も分からないのだと言い訳をさせてほしい。
そんな冷たい人間である私、
安藤 奏(あんどう かなで)は、今年
高校1年。
冷たく、嫌われ体質である私は、ろくに友達すら出来ないことくらい分かっている。
…、分かっていても、一筋の線を描きながら頬を濡らす涙は、何よりも素直で正直だった。