僕+X=日常

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
2:須見:2016/03/02(水) 22:06 ID:M.c

第1章 〜僕と日常〜

ここは、とある田舎町。
今は2月後半だが、春なんていう雰囲気は微塵も感じられず、一面の田畑が見えないぐらいの雪に覆われていた。
気温は・・・言うだけで寒くなりそうだから言わない。
過疎化が進むこの町は、朝は特にひっそりしていた。
ああ、申し遅れたね、僕は天野光。18歳、高校生。
趣味は、ゲームと読書。
最近1番良かった事は、彼女の柚子葉が作ったガッチガチに凍ったチョコレートを食べたこと。
え?柚子葉って?さっき言っただろ、僕の彼女だって。
後で紹介するよ。
と、噂をすれば。
柚子葉が全力で突進してくる。
「ひーかーるーーーー!!!」
衝撃に備えて身構えたけど、貧弱な僕はあっさりと倒れ、道路にしたたかに体を打ち付けた。
・・・なんでここだけ除雪作業したんだろう。痛いじゃないか、と八つ当たりに近い怒りをぶつけてみた。
一方、柚子葉は無言で僕の顔にほっぺたスリスリ。
「柚子葉、どいて」
「え?ああ、ごめん」
悪びれもなくしれっと言って、僕の体からどくが、すぐに僕の手を引っ張って無理やり起こしてきた。
途中でよろけるが、即面からの衝撃によって体制を立て直した。(誰の攻撃かはお察しください)
この子が、篝火柚子葉。同じく18歳。柑橘感溢れる名前。
この町でも結構大きい神社の一人娘で、その為か漆のように黒い髪の毛は腰のあたりまで伸ばしてある。うん、真っ直ぐなストレートでございます。
全体的に整っていて、可愛いよりも綺麗という言葉が似合う女の子だ。
運動はできるが、勉強はさっぱり、特に数学が壊滅的らしい。
でも、運動ができるといっても、ずっと長い距離を長時間走ったりするのはあまり得意ではなく、(といっても女子の中で1位か2位を争うほどの持久力と足の速さの持ち主だが)どちらかというと身の回りのものを駆使して走り回ったり飛び回るという一種のパルクール的なものが得意らしい。だってパルクールの方が体力使うもんね。長距離は苦手、じゃなくて景色が一定でつまらないから嫌い、と前に言っていた気がする。
え?僕?僕は運動はサッパリだけど勉強なら・・・ということで、自分では屈指の頭脳派と自負している。
「ね、光。昨日のニュース見た?」
「え?ああ、うん、見たよ。殺人鬼のニュースだよね?」
「そうそう。中学生が、下校時刻に殺されたんだって。多分、トマトケチャップみたいに」
トマトケチャップ。この町では殺人鬼が出没していて、殺した人間をスコップか刃物かで原型を留めないほどにぐちゃぐちゃにされる。
因みに犯人は猟銃も持っているようで、出くわしたら天使か鬼を待つしかない。
しかし、僕らはその殺された人を一回見てしまい、その悲惨極まりない姿が未だに脳裏に焼き付いて離れない。
まるで、本当にトマトケチャップのようだった。
「ああ・・・可哀想にねぇ」
「ううん、全然?だって、光が大丈夫だったら私全然平気!!」
「・・・もし、僕がやられたら?」
「絶対ないと思うけどなぁ・・・だって光は私が守るから!!」
「もしもの話だよ」
「うーん、だったらねえ・・・光がやられた分の何百倍にもして相手に返す!でね、自分も死ぬ!」
ふむ、要するに原子分解レベルという事ですな。犯人も可哀想に。嘘だけど。
殺されるのは真っ平ごめんだ。
しかも、死んでもついてくるとは、相当な覚悟ですな。
「あ、1つ聞いていい?」
柚子葉が突然、思い出したように振り向く。
「ん?何かな?」
「光は、私が死んじゃったらどうするの?」
一瞬、返事に困った。
なんとも重い空気が流れる。
「・・・僕も、一緒に死のう」
少し言葉を濁して、柚子葉と同じ回答をしておいた。
「やったー!天国でも地獄でもどこまででも光と一緒!」
そう言って飛び跳ねて喜んでいるが、実際、柚子葉が死ぬなんてありえない。あー、別に鋼の体を持っているとか、サイヤ人みたいに銃弾を手で握り潰すとかではなく。
恐らく、ナイフ一本じゃ返り討ちにされる。
柚子葉は神社の巫女としてかなり舞などの修行を積んでおり、巫女なのでかなり大切に扱われたらしく、護身術を習っていたとか。
だから、ナイフは常に常備。え?銃刀法違反?刃渡が足らないよ。
でも、流石に銃が出てきたらなぁ・・・撃たれたらそりゃあ死ぬだろうし。


全部 次100> キーワード
名前 メモ