第1話【はじめまして】
「えっと…ここは?」
昨日自分の部屋で寝ていたはずだった。
のに、見たことのない広い草原に立っていたのだ。
更に言えば、空には見たこともない異形の鳥が何羽か飛んでおり
ここが現実世界ではないことを明らかにしていた。
「ギィィィ!」
突然現れたのは、毛玉のような体に鋭い鎌のような腕を持ち
十字のような口に、鋭い牙がびっしりと生えているナニカだった。
シュッ
そのナニカが鎌のような腕を振るうと、近くに立っていた木が倒れた。
これはヤバイと本能が確信するが、体が動かない。
そしてナニカの腕が自分に向けられた。
このままではやられる、と思い咄嗟に目をつぶってしまった。
「旅人、助けに来たわ!」
「いまならオマケに俺さまもいまーす!」
二人の声がすると、痛みのかわりになにかが顔に付着した感触がした。
恐る恐る目を開けると、そこには一人の女性と、なんか髪が長い男性が立っていた。
ナニカは潰れており、原型を留めていない
さらに、体液が大量に飛び散っており服にも付着していた。
「自己紹介が遅れたわね、私はナズナ・トレール、バルトリク帝国軍の騎士よ」
女性の方が深々と頭を下げる。
「ワテクシはティステース・エンゲージだぜ!ま、よろしく〜♪」
男性の方に、頭を何度か軽く叩かれた。
「お、俺は…萩風輝…よろしく…」
コミュ障みたいな自己紹介になってしまった。
そう思うと、かあっと顔が赤くなり恥ずかしくなった。
「ハギカゼ…?聞かない名ね、隣国のサラナリア帝国の者かしら…」
「ナズナは鈍いな〜こういう奴は大抵別世界の奴だって」
ティステースが笑いながらナズナへちょっかいをかけると
輝の顔が一気に青ざめていった。
別世界、そうつまりこれは現実ではあるが、世界が違うということ
もしかしたらこの世界で死んでしまえば、現実では心臓麻痺かなにかで死ぬか、行方不明となるかの二つだ。
ナズナは青ざめる輝の肩へ手をおくと、優しく肩を叩いた。
「大丈夫、私が守ってあげるから…それにティステースもいる」
ナズナに肩を叩かれ、輝は徐々に落ち着きを取り戻した。
乱れていた呼吸も、安定してきた。
「さ、行くわよ…なにか手がかりがないか探しに!」
ナズナは輝の手を引っ張ると、草原の中を駆け出した。
「お前ら俺様を置いてくなあ!」
そのあとを、ティステースが追いかけていった。
「はじめまして、別世界」
文才のなさに泣きたくなる…(´・ω・`)