ふらりふらりと、歩く。
木が日光を遮ってくれるけど、やっぱり暑い。あたしは汗を拭った。
でこぼこしている山道。
たまに狸の死骸を見かけた。可哀想に。暑かったのかな。
『死』というものが、やけに軽く感じた。
歩いていると、川が見えた。
大きな岩が構えている、浅い川。水が綺麗だ。地面の色で、透明な茶色に見える川。
あたしは、右足の靴を脱いで、その川に足を浸けてみた。
「つめたっ……!?」
反射的に足を引っ込めてしまう。
なんて冷たいんだろう。
ボーッとしていた頭がようやく正常に戻る。
そこからはもう簡単。もう片方の靴を脱いで、両足を川に入れて、ビチャバチャと遊んだ。
冷たくて、気持ちよくて。
祖母や、なにより進路のことについて忘れられた。
こんな軽い気持ちになったのはいつぶりだろう?
多分、15歳になる前はずっとこんな感じだった。15歳になってからだ。あんなに暗くなったのは。
「アッハハハ」
思わず笑ってしまう。
あたしの笑いにつられたように、どこからかあたしの声じゃない笑い声が聞こえた。
あたしは幻聴かと思って、無視しようと思った。けど、やっぱり気になって、周りを見回した。
そしたら、いつの間にかあたしの後ろに女の子がいた。
白いワンピースに長い髪。明らかに幽霊を連想させるその姿に、あたしは叫んでしまった。
女の子は「ちょっとちょっとぉ」と、また笑った。
「悲鳴なんてあげないでよぉ。もお、失礼しちゃうなぁ」
声は若干低い。見た目はあたしより少し上のようだった。
言葉はどこか丸くて、女の子って感じだった。声は低い方だけど。
「あ、あの、あなた、誰……?」
とりあえず、気になる質問。
怪しい人とは正直喋りたくなかった。けど、年齢が近そうだったから、なんとなく……そう、なんとなく聞いてみたのだ。
女の子は「うーん」と少し考えたからまた笑って答えた。
「自分で考えてみて?」
あぁ、この子とは絶対気が合わない。
あたしは女の子から遠ざかるように川に一歩入った。