「うわあ……広いっすね」
「だろ? 最近出来たみたいなんだ」
平日の真っ昼間といえ、やはり人が多い。ゲームや景品の種類も多いため、誰でも入りやすいのだろう。
「お。これ浩介が好きだったゲームじゃん。相手してやろうか?」
河原さんが指指したゲームは昔自分が大好きだったシューテイングゲームだった。わりと古いゲームだが、操作もあまり難しくないし何より面白い。
「いいんすか? お願いします」
専用のモデルガンを手に取り、小銭を入れようとしていたら、視線を感じ、後ろを振り向いた。小柄なポニーテールの女子がこちらを見ていた。
「か、河原さん。なんか見てる人いるんですけど……知り合いですか?」
「え? どこだよ。……あ、里花じゃん。おーい! こっち!」
河原さんが手を振ると、里花と呼ばれた女子は嬉しそうにこちらに走ってきた。
「河原君! やっぱり!」
「よう里花。ゲーセンなんて来るんだな。あ、浩介。これ彼女の里花」
か、か、彼女……しかも可愛い……
グーパンチを百発受けられたようなダメージだ。
「里花、三人で一緒に回らないか?浩介もいいよな!」
この男はなんて事を言うのだろうか。
無神経にも程がある。カップル+部外者…… みじめ過ぎるだろ。
「いや、ちょっとヤボ用思い出したんで今日はここで」
「何だよ。じゃあ今度な」
ここのゲームセンターは広くて助かる。これで河原さん達とバッティングしなくなる。
奥の方にはクレーンゲームやカードゲーム等の子供向けのゲームが多かった。
「……ん、あれってもしかして」
ウサギのキャラクターのイラストが大きく描かれていた。
そう、姉の大好きなウサギのキャラクターだ。
これのクレーンゲームがあるのか。たまには何か取っていってやろう。
「ええっと……三回ニ百円で、五回四百円か」
財布の中身を確認していると、クレーンゲームの側に女子高生らしき人物が現れた。
「へえ、男子でもこんなゲームやるんだ」
いきなり馴れ馴れしく話しかけられ動揺していると、少し微笑んでまた話しかけてきた。
「このウサギのぬいぐるみ、欲しいんでしょ。あたしこのゲーム得意なんだ」
「は、はあ。そうなんすか……」
どういう訳かぬいぐるみを取って貰う事になった。
その女子は慣れた手つきで操作し、アームが軽々ぬいぐるみを持ち上げた。
「え、凄い。たった一回で……」
「でしょ。ほいウサちゃんだよ」
顔の前にぬいぐるみを近づけられた。
大きいぬいぐるみのため、なかなか迫力がある。
「気にいった? あ、そういえばその制服……あたしの学校と一緒?」
「え? あ。本当だ」
その女子が身に付けていた制服は浩介が通っている学校の制服だった。
「奇遇だね。名前は? あたしは八神琴子。三年」
「……林浩介、二年です」
「そっか。じゃあね」
そう言って手を振り、そっけなく帰っていった。
あの人なんだったんだ……
背中が見えなくなるまで八神先輩を見つめた。