「そういえば、林君て部活には入っていないのよね?」
「はい。文化系は柄じゃないし、運動部はここの学校やたら強いので」
昼食をとりながら保健室で宮島先生と雑談をしていた。
飯もうまいし、宮島のもぐもぐ顔最高……!
正直こうしている時間が一番幸せだ。
「じゃあさ、コンピュータ部とか入ってみない? 私が顧問なんだけど……」
「え、コンピュータ部か……。俺機械弱いですけど」
そもそも宮島先生が部活の顧問を担当していた事自体初耳だ。
「そんなの大丈夫! それに……部員が少なすぎて廃部になりそうなのよね……」
少し悲しげに話す先生を見て、少し心が揺れた。
しかし、同じクラスの奴がいたら気まずいな。いなかったらすぐにでも入りたいのだが……
「宮島先生。二年の奴っています? もしいなかったら……入ろうかな」
「本当!? 二年生の子はいるんだけど、今年度転校してきた子だから大丈夫よ」
満面の笑みで入部届を渡され、放課後にコンピュータ室に行くように指示された。
可愛い女の子がいますように……
男しかいないという事はありませんように……
〜
「おお……年季入ってんな」
うちの学校の校舎と教室はやたら古い。特にコンピュータ室は、壁の塗装も剥げてボロボロだ。
「し、失礼しまーす」
「あ、あの時の。林クン?」
入った瞬間に声をかけられた。
その声の主はどこか見覚えのある顔だった。ゲームセンターで会った……八神琴子だった。
「何何? 琴子ちゃん知り合い? ……なんかダサ」
ツヤのある黒髪が特徴的な女子が、こそこそ話している。
自分でも自覚しているが失礼な。だが可愛いから許す。
ふと周りを見渡してみると、誰一人パソコンを触ってなかった。皆が触っているのは、携帯、菓子、雑誌だった。とても部活動中にはみえない。
「ここってコンピュータ部なんですよね?」
俺がそう言うと、八神琴子は立ち上がり、不気味に笑った。
「そう、ここはコンピュータ部。しかしただのコンピュータ部ではない」
では何なのかとつっこみたいが、先輩なので堪える。
「コンピュータ部兼、パラレルワールドクラブだ!」
……は?
何を言っているか分からない先輩に、何をするか全く分からない部活。
……やっていけるのか。