彼女も初めは怖かった。
初めは夏の夜だった。
ガコン
と何かが落ちる音でハッとする。
彼女は自販機の前にいた。
ゆるゆると怠そうにしゃがみこむ。自販機にぬめる手を差し込むとそのままジュースの缶を滑らせた。
帰路に着く。
どうにも気分が落ち着かない。
大きめのサンダルが彼女の足を煩わせる。
自宅に向かうと三本の道が現れた。影が揺れる。街灯に目が眩む。意識が飛んでいく。汗が落ちる。固まっていた足がほどける。
再び影が揺れる。
彼女の足は本来無いはずの右の道を指していた。