唐突だが、俺の職業は殺し屋だ。
人を殺すだけの簡単なお仕事、といえば簡単だが、
長年こんな職業をしていると、殺された奴の“思い”がわかる。
今日の仕事は比較的楽な仕事だった、しかし、思いはいつもよりも、重く感じた。
泥濘に嵌る様な不快な思いを感じながら、俺は行く宛もなく、路地裏を歩いた
家には帰りたくない、洗濯物すらできない俺の部屋は、まさに混沌だった。
すると、道の脇に、手足だけが伸びている、年頃の少女を見つけた
捨てられたのだろう、この国は捨て子が多いことで有名だ。
長い間見つめていたらしく、少女は聞いた
「……お兄さん、何?」
「いや、お前、捨てられたのか?」
「そう、捨てられたの」
見た目よりもずっとか細い声を出し、少女は告げる。
勿忘草色の目をした少女に、俺は聞く、
「……家事はできるか?」
「できる、裁縫も少々」
「行く宛はあるのか?」
「……ない」
「決定だ、住み込みの家政婦として俺に雇われろ、小娘、給料は弾んでやる」
「…いいの?」
「ああ、俺の部屋の汚さにビビるなよ?」
ここで一人うずくまっていても、将来の道は娼婦になるだけだろう、
だったら、拾ってやる方がまだマシだ。
俺は家に向かって歩き出す、後ろについてくる少女は、何故か微笑んでいる様に見えた。