「涼しー……暑かった……私が暑がりだからかな?」
扇風機の電源ボタンを押すと、扇風機の羽がパタパタと回りだし、綾の方に風が向かってくる。風は暑さを攻撃する様に吹いて来る。本当は強いのにしたいが、節約の為に弱い方にした。
この扇風機の回っている羽は凄い。何せ、このまま消さなければずっと回っているのだろうから。生まれ変わるのならば、誰かに役に立つ扇風機の様な道具になりたい。と思っていた。このまま扇風機の中に指を入れて死んでしまおうか。とも考えた。何にも役に立たない何て生きている価値も無い。そう思ったが、怖くて入れられなかった。
ある程度風に当たったからと扇風機を消し、次はどうしようかと考えた時、さっきと同じ様に襖が開き、母親が夕飯が出来たと伝えに来た。この際、お腹はあまり空いていないが夕飯を食べに行く事にした。綾にとって、ご飯は天国の様な物なのだから。
「いただきまーす。」
今日の夕飯はシチュー。綾はご飯かパンに付けて食べると言えばパン派だ。母親も結構分かっているのか、パンを用意していてくれた。こんなに不登校でも、好みを知っていてくれるのは嬉しい事だな……と母親の方を見て笑みを浮かべた。
そんな時、綾が今一番言われたくない事を、父親に言われた。
「なぁ綾、学校は何時行くんだ?」
一番言われたく無い事、それは学校の事だ。勿論理由は有る。だが、親には迷惑を掛けたくない為言っていないのだ。
後で言う、と何時もの様に誤魔化し、丁度シチューとパンを完食して、そのまま和室に戻った。
「言いたくないのに、何回も言わせないでよ……」