「そりゃあとんだ災難だったな、お前。」
「ホンマにな!!ホンマにな!!
この程度のプレゼントぐらい自分で渡せよバーロォー!!そんぐらいの度胸持てよ!根性持てよ!!ハゲろ!!」
「最後関係なくね?」
高校に入ってから何故だかとても馬のあった友人と向かい合って、静かなカフェでティータイムを営む。然し反して、私の内心は第二次世界大戦ばりに荒れている。理由はこの、私の左手の中で今にも潰れそうになっているプレゼントボックスだ。
よくあるだろう。幼馴染だの同じクラスだのと言ったよしみで「⚫︎⚫︎クンにこれを……」とプレゼントを渡されるやつだ。間違っても、私に渡されたものではないのだ。
まあ仕方ない。高校生活一週間目にして、早くも我がハイスペック幼馴染はその名を学年全体に轟かせるほどの有名人になっていたのだから。優良物件を狙う女子の格好の餌食な訳だ。
後一歩、歯止めが聞かなければ荒れ狂う野獣となった私に粉微塵にされていただろうこの箱は、如何にも女の子らしいリボンと包装紙にラッピングされて数分前まで隣のクラスの女子の腕にあった。
つまり何が言いたいかというと、そうだ。リア充爆発しろ。
この幼馴染のせいで小、中学校と何年もその役を担ってきた私だが、未だにこの『橋渡し役』はいけ好かない。腹わたが煮え繰り返りそうになる。
「おい箱ミシミシいってんぞ。」
「あ、いけない……またやっちゃうところだった」
「『また』っておいお前……」
「まさか常習犯……」と呟く友人を無視して、再度箱を一瞥する。少し凹みかけ、リボンも歪んでしまったその箱は、私の手の中であまりにも儚くその存在を主張していた。
高校になってからは公言していない為、この友人以外には誰一人としても私と直哉の関係を知るものはいない。然し、ごく稀なボケをやらかした幼馴染が教科書やら辞典やらを借りに来たり、なんでもないことを話しかけたりするので、一部の人には「直哉くんと仲の良い生意気な女子」として認識されかけている部分もある。なんと理不尽な。私は何もしていないというのに。
「……」
小さく溜息をついて、箱を鞄の中に押し込んでやる。もう怒りすぎて、怒る気力もなかった。
一応渡しておいてやるが、自分にとってどうでもいいものを大事に持っていてやる程私の面倒見は良くない。それが癪に触るやつだったら尚更だ。
「ドンマイ苦労人」と苦笑を浮かべる友人を軽く睨みながら、私は溶けた氷で薄くなったアイスティーを一気に飲み干した。