「何よ、それ。」
少しキツイ言い方だけど、くうは私の足にすりついてくる。
くすぐったくも感じるけど気持ちよくも感じる。
「ねむ…今日はもう寝よっか。みんなも帰ってくるの遅いだろうし。」
身体が大きいので幹部部屋に入れない白虎は私の部屋にいる。
多分、妖狐も白虎と一緒にそこにいるんだと思う。
「…やっぱり、親がいないのは悲しい?」
「そんなことないよ?ずっと前からそうなんだし、仲間がいるから。」
…そう、私達妖獣使いには親がいない。
親が子を産んだ時、妖獣使いと知ってその子を殺してしまったことがあるから。
それ以来、掟としてそれぞれの契約妖獣が世話をすることになっている。
…世話といっても、ペットに近いけど。
「…ありがと。じゃあ早く戻りましょ。」
「そうだね。」
私が微笑むのをみたくうは、ドアに向かって歩き出した。
「…ん、」
なにか頭と腰に違和感を感じて目が覚めた。
外はもうすでに明るくなってるし、朝なのか。
…じゃなくて、違和感はなんだろう。
悪いことじゃないといいな…なんて思いながら取り敢えず頭に手を置く。
「…?」
…そこには、もふもふしたものがあった。
何か毛がついていて、もふもふ気持ちいい2つの物体。
慌てて腰にも目をやると、そこには猫の尻尾のようなものがパジャマのズボンから飛び出ている。
「く、くう!何、これ?」
やっぱりそれももふもふしていて、取れそうにない。
私の心は焦るばかりで、思わず相棒の名を呼んでしまう。
「…にゃぁ、くろおはよう…って、その耳!」
今起きたらしいくうは、私の耳を見て驚く。
焦るのは分かるけど、くうでも驚くこの現象って、何…?
「ど、どうしたにゃ?」
「…知らないけど、起きたらこうなってて、」
ど、どうしよう、学校とか…
隠せる、かな?
「こんなケース始めてにゃよね?」
「今までは無かったと思う…一応理事長先生に話しておく。」
「えぇ、晴明はあんまり好きじゃないにゃぁ」
「しょうがないでしょ?」
私達の学園の理事長先生は「安倍晴明」という。
…そう、有名な陰陽師。
彼は色々とやって永遠に理事長先生は続けている…らしい。
これからも続けるのか、と言われても分からない。
陰陽師と妖獣使いは深い関わりにあって、晴明は学園の校則なんかを変えたりしてくれる。
「…授業中に帽子被っていいか、聞いておく。」
「それが一番にゃ。」
部屋にある時計を見たら時間はもう7時。
今から朝食を準備して、9時ごろこの倉庫を出るのが私達星雨幹部の朝。
全員朝が弱く、マイペースだったりするから自由気ままな生活を望んでいる。
「…よし、ご飯食べに行こう?」
「…ん、白虎達起こしてくるにゃ」
「ありがと、先に行ってる。」
くうが白虎達の寝る部屋まで行ったのを見て、私もこの部屋を出た。