「し、白石さん!付き合ってください!」
中学生後半になると、告白シーズンというものに入るらしい。
第2ボタンをくれ、付き合ってくれだの
恋歌の心には、なにも響いてこなかった。
「うん、いいよ!」
ただ、了承するだけだったのだ。
それの積み重ね積み重ね、いつしか恋歌にはたくさんの『彼氏』ができていた。
『調子乗ってるんじゃないの?』
『誰とでも付き合うんでしょ?きもちわるい』
それを、女子は不満に思う他なかった。
恋歌は家に帰ると、バンッと床を叩いた。
「違う違う!こんなの愛じゃない!」
壁に爪をたててキイッと引っ掻く、爪が剥がれるほどの傷がつく
愛は、キラキラしててふわふわしているもの。
こんなもの、愛じゃない!
恋歌は苦しんだ。
愛というものが、なにか、悩んで悩んで、悩み続けた。
白石恋歌は愛を知らなかったのだ。