冷たいコンクリートが打ちっぱなしの部屋に、無機質な蛍光灯だけが光を放ち、時計の針は音程も何もかもを変えずに、淡々と音を鳴らす。
時計の針が深夜零時を指した所で、人工知能はあと6日だと、抑揚も付けないで言った。
犯罪者を使った実験、とでも言うべきなのだろうか、世界は犯罪者に溢れ、科学は実験者に飢えていた、都合のいいモルモットに私達はなり、人工知能と監視カメラに二十四時間監視されながら六日間過ごす。
私達、と言ったがこの実験は、二匹モルモットを用意させて、片方を殺したら外に出られる仕組みにし、一匹がもう一匹を殺した時の脳波を調べる、この実験はモルモットを人間に置き換えるだけで良い、つまり、私達はどちらかを殺さなければならない、顔も名前も知らない相手を。
顔も名前も知らないのならば、特に話す事なんてない、私達は一回も会話をせずに、只々時間を沈黙で掃いて捨てるだけだった、殺す期限は7日間、
私は特に行動も起こさずに、液体の栄養食を飲み、静かに本を読むだけだった。
蛍光灯が切れそうになり、頻りに瞬きのような点滅を繰り返している時、
私は名も知らない男に問いかける、
「……どっちを殺すの?」
「何を言っているんだ、二人して助からねばならないだろう」
唖々、こういう奴が一番面倒くさい、とっとと頭をブチ抜けば済む話だろう、
私は少し棘を含ませた声で男にこう告げ、髪を意味もないのにかき上げた。