ホルマリン漬けの愛はいかが?

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2:ムクロ氏@太もも大神:2016/05/09(月) 18:37 ID:3uI

「あなたが好きです!」

そう言えたら、きっと心が軽くなる。
思いを伝えたあとに、こう言えたならもっと楽。

「お願いします、あなたをホルマリン漬けにさせて下さい!」

__……無理だろうけれど。

あの人と私は友達。しかも結構仲のいい友達。そんなことを言ったら、絶対絶交される。
だってあの人は理科が嫌いだから。
理科に関係するものは、ほとんど嫌い。
薬品とか道具とか、嫌いって言ってた。気持ち悪いし、不気味なんだって。

でも、私はそれらが大好き。
特に好きなのはホルマリン漬けにされたものたち。
だってとっても綺麗じゃない?
あの永久的な儚さが生み出す美しさと言ったら……!
それに、液体の色も素敵でしょう?
漬けられているものの美しさが引き立つし、目にいい色をしてるから。

……でも、誰もそれを分かってはくれない。
皆、あの人と同じように気持ち悪いって言う。
どうしてって思うけど、皆は逆に聞いてくる。
どうしてあんなのが綺麗なのって。

私は不思議で仕方がない。
だって、あの美しさを、誰も理解できないとか、ありえない!
それこそ、魔法が使えるようになるのと同じくらいありえないでしょ!?

まあ、皆は逆に思ってるんだろうけどね……。
でもいいんだ。人それぞれだし。
私はあの人がホルマリン漬けにされるだけでいいんだもの。
それ以外の人の意見なんてどうでもいい。

__……あ、でもママの意見は大切かな。
ママは、世間では死んだことになっているパパをホルマリン漬けにした、私にとっての恋の先輩だから。
先輩の意見はちゃんと聞いておかないといけないから。

ママが言うには、好きな人を事故や何かで死なせたことにしたり、行方不明にさせるのがいいんだって。
そして、自分の手で安らかに殺してあげて、ホルマリン漬けにするのがいいらしい。

さすがに学生の身である私はそんなことできない。
だから、あの人に全て告白して、自分からホルマリン漬けになってもらった方がいいと思ってる。
相手も自分からなった方が、気分はいいだろうし。

でも、どうしても告白のタイミングが『逃げていく』。

私とあの人以外、誰もいない教室。
さあ告白するぞ!……って思って一歩を踏み出したら、野球部のボールが窓を壊して教室に入ってくるなんて、いつものこと。
いい雰囲気になっても、どこからかバトミントンの羽が飛んできて邪魔する。
もうメールで……と思っても、その日はなぜか携帯が壊れちゃったり。

___神様、もしかして私が嫌いなんですか?
何度星に向かってそう言ったことか!
神様から返事は返って来ないし、むしろ返ってくるのは、さっき出ていったばかりの蚊だったり。


__私、恋愛に向いてないのかなあ……?

目の前で楽しそうに話す友達を見ながら、私はそう思った。
身振り手振り、頑張って楽しそうに話すこの人は私の好きな人。
あまり口を開けてないのに、結構大きな声が出てる。小動物みたいで、とっても可愛い。
ああ、はやくその可愛さを永久的なものにしてあげたい。
こんな汚い世界から、美しい世界に連れていってあげたい。



___はやくホルマリン漬けにしたい。


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