ホルマリン漬けの愛はいかが?

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3:ムクロ氏@太もも大神:2016/05/10(火) 07:21 ID:3uI

朝の教室___私とあの人以外、誰もいない、静かな教室。

早い時間に教室に来ると、『好きな人と二人っきり』という素晴らしい時間ができる。だから私はこう思う。
「早起きは3文の得と言うけれど、正しくは30両の得だよね」って。

私は、離れた席に座って読書をしている、あの人のところに向かった。
猫背になっているのが、小動物みたいで本当に可愛い。

「おはよう、春乃。今日読んでる本は何?」

本から私に目を移す。
大きな目に、ニヤニヤ笑う私が映る。

今、この人___春乃は私を見てる。
友達として見ている。
けど、私は違う。彼女がホルマリン漬けになっている想像を見ている。
目の前で、緑の液体に包まれている春乃は、私だけのもの。
ホルマリン漬けになった春乃には、私しかいない。
皆気持ち悪がって春乃に近づかない。けど私は違う。本当に愛しているから、ずっとそばにいる。

朝はおはようって言って、夜はおやすみって言う。
彼女のそばで寝起きする。
朝日を浴びて光る彼女はどれだけ綺麗な姿で、ホルマリンの中に浮かんでいるんだろう……。

「この本?この本は前読んでたやつだよ」
「読み直してるの?」
「うん、そうなの!だってね、これ伏線が凄い張り巡らされていて……面白いんだよ、これ!」

本を片手に、それがどれだけ面白いか語っている。
ホルマリン漬けにしたら、この楽しそうな表情は見れないけど、永遠の美しさを手に入れられるんだったら、いいよね。

「ねぇ、弥生、この本読んでみない?」

私は春乃から本を受け取った。

厚い本だけど、彼女が「好き」というのなら読んであげよう。

「うん、読んでみるよ。じゃ、ちょっと読んでくる」
「うん!感想ちょうだいねっ!」


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