「ゆ、雪宮さんが……!」
かたかたと体を戦慄かせた工藤さんが私に指をさすと同時に、部員全員の視線が一気にこちらに向いたのが分かった。
血の付いたカッター。
彼女の腕につけられた、生々しい傷。
一滴、一滴と。
鮮血が彼女の腕を伝い落ちていく様を、私は幻か何かを見ているような心地で眺めていた。
赤黒いそれは彼女の白い腕に対比するようで、その不釣り合いな色が何故か目に焼き付いて離れない。
迂闊、だった。
部活も終わる頃、タイマーの片付けをしていた私に工藤さんは近づいてきた。名前を呼ばれた私が振り向いた途端、『それ』を見た私の頭の中が真っ白になった。
彼女は、手に掲げたカッターナイフを勢いよく振り下ろした。
_____自らの腕に。
肉が裂ける嫌な音と、見る見る間に溢れ出す血液を目にした瞬間、呼吸が、時が止まったような気がした。
彼女がこちらに投げた物が落ちる音を聞き、一気に意識が浮上する。思わず、工藤さんの腕を手に取った。
「なにして____」
「きゃああああああああああああ!!!!」
工藤さんの凄まじい悲鳴に、一瞬怯む。
次の瞬間、何事かとばかりに更衣室で着替えていた部員たちが飛び込んできて、各々が今ある惨状に目を瞠った。
そして______
「最低」
その一言で、何かが壊れる音がした。