『カメラマン』
「・・・なぁ、どう思う・・・・・?」
「・・・え・・・?」
「この光景だよ・・・・・」
「いや・・・どう思うって・・・・・」
「明らかやべぇだろぉ〜・・・・・」
「だな、前々からちょっと変な奴だとは思っていたが、まさかここまでとは・・・・・」
「何で何百って数のカメラのレンズを、全部部屋の真ん中へ向けるかねぇ〜・・・・・」
「何かさ、監視されているみたいで気持ちわりぃな!」
「やめろって、アイツがひょいっと帰ってきてこの話少しでも聞かれたら、気まずいだろ?」
「う〜ん・・・・・それもそうだな」
「にしてもアイツ、いつになったら帰ってくるのやら・・・」
「それ、マジでそれ」
「アイツ「ちょっと買い物してくるから、わりぃけど留守番頼むわ」って言って、何分経ったよ?」
「俺達が来たのが11時47分だったから・・・1時間と30分だな」
「なげぇなぁ〜」
「なげぇねぇ〜」
「大体さ、アイツ何であんなにカメラに拘るのかね?前は人間観察が趣味とか言ってたじゃん?」
「さぁな〜、趣味が変わったんじゃね?」
「そうかな〜?」
「そうだろぉ〜、まぁ、俺はアイツと違って、前の趣味に今の趣味を足しているけどね」
「どんなどんな?」
「読書を少しずつしながら、絵を描く」
「おぉ〜、何そのアトリエにいる一流画家のある日の過ごし方みたいな」
「だろだろ〜?コーヒー飲みながらさ、画家みたいな時間を過ごすんだ・・・・・」
「でもそれ、絵描いてる奴なら結構やってそうじゃね?」
「おいお前、それを言うなよ」
「まぁまぁ」
「お前の趣味は何だよ?」
「俺?俺の聞いちゃう?」
「聞いちゃう」
「俺の趣味はね〜、折り紙かなぁ〜」
「折り紙・・・」
「そう、鶴とか猫とかさ、動物を折るのが特に好きだな、俺は」
「お前に動物が折れるのか?」
「当たり前だろー!こう見えても俺は折り紙大得意だからな!」
「はいはい、わかったわかった」
「その態度・・・明らか信じていないだろ?」
「うん」
「あー!やっぱりなー!それじゃあわかった!お前に俺のイリュージョンを見せてやる!」
「で、そのイリュージョンに使う折り紙は?」
「あっ!やべ・・・今折り紙持ってねぇ・・・・・」
「さぁ、どうする?さぁ、さぁ、さぁ!」
「紙じゃなくて心が折れた・・・・・」
「アイツが出かける時に、ついでに頼めば折り紙できたのに・・・・・」
「うるせーなー!こうなることが予めわかっていたら、俺だって頼んだよ!」
「まぁまぁ落ち着けって、そうだ!こっちは留守番させられている身なんだ、アイツがどんな写真や
映像撮ったか、勝手に見ちゃおうぜ?」
「ナイスアイディーアー!」
「それじゃあそこのカメラちょっと取れ」
「おうよ」
ひょいっ
「・・・あれ?」
「どうしたの?」
「これ、撮っている状態になっている、しかも映像」
「今?」
「うん、今、映画かよ、1時間半も撮っているぜ?」
「・・・ちょっと待って、それ、おかしくない?」
「何が?」
「俺達が来たのは何分前だ?」
「一時間半前だが?」
「俺達が来た時から・・・撮っているってことだよな?」
「あ、確かに・・・・・」
「・・・ひょっとしたらアイツ・・・趣味を足したのかも・・・・・」
「何が?」
「・・・カメラと人間観察・・・・・いや、もしかしたら、カメラで状況を撮って観察する方向に
変えたのかも・・・・・」
「まっさか〜、そりゃねぇだろ?」
「・・・これも・・・これも、これも!・・・他のカメラにも撮られている・・・・・」
「・・・・・」
「これはやべぇぞ・・・・・」
プルルルルルル・・・・・
「うぉっ!?」
「お、お前出ろよ!」
「お、おう・・・」
ピッ
「あー、もしもし?え、コーヒーと折り紙を買った・・・・・?あ、うん、わかった、じゃーねー」
ピッ
「逃亡しよう」
「そうしよう」