「もしかして、あの牧野さん…?」
「あの東中生徒会長で、3年間学年1位を取り続けたっていう?」
「バスケで全国大会にも行ったって聞いた!」
「修学旅行に行く先々でモデルのスカウトされてたよ」
教室に着くまでの間、沢山の人からの視線を感じた。
そして、色んな話も聞こえる。
確かに、皆が言っていることは本当。
なりたい自分に近づきたくて、努力に努力を重ねていったら、いつしか、
『皆の憧れの存在 牧野梨都』が、
出来上がっていた。
「梨都、告白されたら教えてよ?あんたの告白回数数えるのが私の生き甲斐なんだから。」
横からソッと出てきて、こんなことを言うのは唯一の親友、的場 夕日(まとば ゆうひ)。
中学の頃、出席番号が近かったことがきっかけで仲良くなった。
今では、1番の理解者…かもしれない。
「夕日、なに能天気に言ってるの。その前に私、女子の友達出来るか危ういのにさ。」
自分でいうのも可笑しいけど、私はどうやら男子にモテるようで。
そのせいか、女子の一部から凄く嫌われている。
1-4を目指して廊下を歩く今も視線の中に所々睨みも感じるし…。
「そんなの良いじゃーん、私と同じクラスだし。何か女子にされたら倍返しにしとくから。」
そういってヘヘッ、と笑う夕日は、本当に頼もしい。
美人なのに気取らなくて、友達のために自分を犠牲にしようとするところとか、本当に人間的に尊敬する。
…やり過ぎるときもあるけど。
「あ、ここか1-4。」
夕日はボソッと呟いてから、
アイコンタクトで私を見つめた。
『心の準備良い?』みたいな意味だと思うから、私は頷いた。
中学の3年間、クラス替えの度に沢山の人から視線を浴びた。
メンタルの弱い私は、その視線で結構疲れてしまう。夕日は、そこまで分かってくれてる。
ガラッと夕日が扉を開けた。
夕日の後ろに続いて、私も教室に入る。
一瞬、シンとなった教室。
それから少しずつ活気を取り戻していくけど、会話の中には「牧野さん」だとか、「的場さん」という声もチラホラ聞こえる。
夕日と席が前後で良かったと安堵のため息を漏らしながら、席に着いた。