準備を終えてから、夕日と向かいあって雑談をしていた。
といっても、夕日が振り返ってくれてるだけなんだけどね。
「でさー、すっごい面白くてー!」
「え、そうなんだ?私も今度見よ、」
ドラマの話で盛り上がってた途中に、私の声は遮られた。
廊下から煩く響く悲鳴に近い女子の声に。
多分だけど、黄色い歓声ってものかな。
「…何だろうね?」
「ねー。うるさいなー、もう。」
気がかりでしかなかったけど、ミーハーに見に行くことが少し恥ずかしく思えて、気にしないようにして話を続けていた。
その時。
ガラッ
音をたてて扉が開く。
反射的にその方へ向くと、
私は、瞬きすら出来なくなった。
そこに立つ人物は、
誰もが知る、憧れで。
私も、中3の頃出会ってしまった。
「う、そでしょ。
あの、白石永久(しらいし とわ)…?」
夕日の呟く、白石永久こそ。
今沢山の歓声の中で微笑む、
”絶対的アイドル”
私達とはかけ離れた世界に存在する、幻のような存在の彼が、
どうしてここに来たのか。
どうして制服を着ているのか。
彼のあの顔が、
私の永遠の片想いの相手と酷く似すぎているのは、何かの予兆ですか。
「カ、イト…。」
神様、もしかして。
これは、必然的な出会いですか…?