姉が家にいるということはー…
そんなことを考えながら、志織に姉のあることを告げた。
「…あ、あぁ わかった。心得ておくよ。」
そして、緊張しながら家のドアを開ける。自分の家のドアを開けるのに緊張するなんて、なかなかない経験だろうなぁ。心の中でそんな下らない事を考えていた。ガチャ。
「葵ちゃ〜〜〜ん!お帰り〜!も〜、お姉ちゃん、寂しかったんだから〜うえ〜ん」
ウザい。客人が来ていることにすら気づかないなんて。ウザイ、ウザイ、ウザすぎる。我が姉ながら今回ばかりは本気で引いた。まぁ、毎日引いているのだが。
「…朱さん、聞いた通り、葵のこと溺愛してるんだな。」
「はは…。うん…。」
「あら?葵ちゃん、後ろの美人さんはだぁれ?」
「あ、葵ちゃんのお友達、河元志織です。朱さんのお話は葵ちゃんから聞いています。」
「あ、あぁ〜!志織ちゃんっていうの?いらっしゃ〜い!さ、上がって上がって〜!」
もう嫌だ。確かに家族が姉しかいないから、いなくなったらなったで泣くんだろうから、さすがに「消えろ」とまでは言わない。だからせめて私のことをそこまで溺愛するのはやめてくれ。恥ずかしい。
「はぁ…、ごめん志織、お姉ちゃん、あんなので…」
「あ、ああ、気に・・・するな。」
口ではそんなこと言ってるし、志織は感情を表に出さないためわからない。だが、確実に引いている。私の目から自然と涙が溢れてくる。
「あ、葵!泣くな、な?そ、そうだドッペルゲンガーの話だったな!」
それを聞いてやっと我に帰った。そうだ。そもそも志織が私の家に来たのはその話をするためだった。そしてしばらく話し合い、まとめた。
「…えー話をまとめると、私たちは今日、同じくらいの時刻に自分のドッペルゲンガーを見た。でいいんだな?」「うん。」
「まぁ、今日はとりあえず帰るよ。明日はこのドッペルゲンガーをどうするか、だ。それじゃ。」
キィ…バタン。…明日?志織、明日も来てくれるのか?私はまた束の間の喜びを満喫してから思い立った。まず、あのバカ姉をこらしめよう。
「…?葵ちゃん?なんで笑顔で拳を握りしめてるの?」
ドッ。なんとも表現しにくい音が部屋を満たした。鈍いと言うか鋭いと言うか。そんな音だ。
「ギィヤァァアアアアァァアァァ!!ごめん、ごめんてば葵ちゃイィヤァァァァァァァアァァァァァァ!!」
翌日、姉の顔にはいくつかの痣ができていたが、自業自得だ。
〜続く〜