口を開くと、海に沈むから。

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3:Anna◆Pk:2016/10/22(土) 07:46





言うと思った。

果たしてそうなのだろうか。彼に私の言いたい言葉が分かるのならば、きっとこうやって話してはくれないだろう。
喧騒がゆっくりと静まり返る。
それと同時に扉を勢い良く開ける音が聞こえた。


「ほら、席付け」
「すみません、とか言っても俺が前の席なんすけどね、はは」

先生が無表情で淡々と述べると、彼は陽気に笑って私の目の前に座る。
全然笑えない。彼の言うことはいつでも空回りしているのだ。その証拠に、冷たい視線が嫌でも刺さってきた。
やっぱり、この感じはいつになっても慣れないものだ。しかも私までとばっちりを食らうから、風評被害もいい所である。

けれども、彼の留学の話を聞いてから心に渦巻くモヤはそんな視線もどこ吹く風でどんどん、綿あめを作るみたいに大きくしていった。

やがて、彼が座りそれと同時に教科書を開く音。

それからは、秒針が刻む音。
筆圧の強い先生がチョークで黒板に書き込む音。割る音。
それに伴った、生徒達のシャープペンシルを振る音。ノックする音。書き込む音。折れる音。

無機質が奏でる音はまるでオーケストラ。
しかしそれは、どんどん薄れていくのだ。


私の耳は、都合良く出来ているものだから。


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