小説
ジャリ、ジャリ。
僕の道を歩く音が響く。
いかにも、『手抜き』という道。
まあここは、それぐらいで充分だろう。
だって、『墓地』だから。
なんで僕が墓地の道を歩いているかって?
そんなの簡単さ。
今日は鈴の月命日だからだよ。
そう思って、″なんか″笑った。
鈴がいなくなったのは、5ヶ月前。
まだ、僕たちは14歳だった。
もう僕は、15歳になろうとしている。
まだまだ肌寒い季節だけど。
鈴と一緒に、15歳になりたかった。
中学を一緒に卒業したかった。
じゃあ今から、鈴がいなくなった理由を話そうか。
〜5ヶ月前〜
その日、僕らは散歩がてらに公園に行っていた。
世間で言う、デートってヤツだ。
事件が起こったのは、その帰り道。
僕たちは、好きな曲について話していた。
そうそう、言ってなかったね。
僕らには、好きな曲があるのだ。
「あの曲の良いところは、主人公の過去だよね。」
鈴はそう言って、後れ毛を払った。
僕はびっくりした。
だって僕の好きな部分とは違ったから。
まあ違うのは問題ないけど。
だけど僕は、主人公の過去は嫌いだった。
あの部分は好きではない。
「そうかな。僕は全部だけど。主人公の過去も、未来も。」
そうなのだ。
全部好き。
鈴はムキになっていたのか、滅多に出さない大声を出した。
「なにそれ。そういうのって、本当の好きって意味と違うじゃん。そこがあるから、
いいんでしょ、普通。」
その言葉に僕は、ムッとした。
そうだった、僕は人と関わるのが好きではないのだ。
話し合いなどやっている場合ではない。
まあ僕は、鈴のことが好きだが。
「そう?全部好きって言うのじゃないと、その曲が好きってことじゃないと思うけど。」
僕は言った。
鈴は予想外の反応をした。
「煩い!いいでしょ、別に。もう行くから。」
鈴は走っていって、横断歩道を渡ろうとした。
しかし、見てしまったのだ、僕は。
右から、トラックが来ているのを。
「鈴、危ない!行っちゃだめだ!」
鈴は僕の言うことを聞かなかった。
遠くで鈴のポニーテールが揺れた瞬間。
キキーッと凄まじいブレーキの音。
鈴は倒れていた。
僕は遅かった。
鈴は即死だった。
それ以来僕は、楽しくない毎日を過ごしていた。