私の足は、教室のドアに向かっていた。逃げるの?
「みんな大っ嫌いなんだから!優子ちゃんの事!」
そう教室から聞こえた。
「優子…?」
私は家に帰り、部屋に閉じこもった。もちろん鍵なんてものが付いているわけではなかった。
「優子?早退してきたの?どこか具合が悪いの?」
母は優しかった。でも今の私には優しさよりもバカッ!そう言って叩いてぶってもらったほうが気が落ち着く気がした。
「五月蝿い!黙ってて!お母さんなんか大っ嫌いなんだから!」
「優子…?優子!あなた、もう六年生でしょう!?しっかりなさい!」
母はそう言うと私の部屋から離れていった。
「お母さんがブスで太ってて、お金持ちでもなくて、お菓子も作れなくて、お人好しなせいで男に捨てられたから…。」
母は昔私がまだお腹にいる頃、当時付き合っていた男に浮気相手がいる事に気づいていたにもかかわらず、何も言わなかったそうだ。愛なんて二人の間になかったのだ。そのせいで今お金はなく、貧乏な生活を強いられている。最悪だ。優しい人ほど辛い目にあう。その事を幼い頃から理解していた私は「嘘」で全てを隠した。自分の性格も、自分の表情も、すべて。