アドゥルバイア帝国は、500年に渡った隆盛の袋小路にあった。かつて大陸の半分をすら支配し、太陽の沈まぬ国と呼ばれたかの国は、領土の分離独立を許し萎むようにして衰退していたのである。国家として成立したかつての領土に取り囲まれ、ことに北方のアルタ王国からの度重なる軍事衝突は帝国を消耗させていった。
アドゥルバイアの劣勢、その要因の一つは何といっても資源自給率の低さと工業力の不足である。帝国の衰退の隙を突かれた形で、それらの特区であった地域はその長所を活かし帝国に牙を剥いたのだった。今や帝国の生命線はサルファを通過する補給線のみ。されどサルファとて支配への怨恨は拭いきれず、資源そのものは提供されず、取り決められたのは補給路への不干渉が精一杯であった。
非効率な資源供給は戦線の消耗に追い付かず、また得られる資源も首の皮一枚で繋がる程度のものであった。
もはや帝国にあってはこの戦争に期待するものはいなかった。しかし帝国は往生際悪く国威発揚を絶やさなかった。その一つとして講じられたもの……『サティリカ』の編成であった。