* Prologue * 「さよならなの?」 そう聞く彼女の珊瑚色の頬に、つぅー……と涙が流れた。 それは、優しい月の光に反射して、悲しいくらいに輝いた。 「うん」 僕は短く返事をして、周りを囲むビル群を見つめた。 航空障害灯が、じっと僕らを照らしている。 「ばいばい……」 彼女が、僕の手をすっと振りほどく。 僕は、彼女を見ることもできなかった。 ただただ、お互いに、泣いていた。