「ハルセ……起きろ、ハルセ」
「ん………」
耳に響く心地よい声、布団の上から優しく体を揺すられるこの感覚。
硬い掌が、幼子にするそれのように私の前髪を掻き上げる。眉間のあたりを親指でさすられてゆっくりと瞼を開ければ、目の前にはいつも通りの御尊顔。そのサラサラ髪といいツヤツヤほっぺといい、今日も今日とてムカつくくらい綺麗だ。
しばらく夢現つでその顔に魅入っていると、「おはようねぼすけ」と額を小突かれる。
「おばさん待ってるから早く降りろよ。」
「ん……」
私がベッドからのろのろと降りるのを見送ってから、彼はいつものように私の部屋を辞す。
寝癖ぴょんぴょんにヨレヨレパジャマで寝起き全開の私に対し、彼はすでに制服をピシッと着こなしていて、隙の欠片も見せない。背中からでも漂うイケメンオーラに、思わずあっかんべをしたくなる。
ぱたん、と扉が閉じる音を背に聞いて、毎朝思うことを呟いた。
「やっぱ私、あんたの顔嫌いだわ」