頬を撫でる生ぬるい風に、少し眉をひそめてしまった。
東京とやらの空気は淀んでいて、こんなところに人間はすんでいるのかと驚かされる。空中飛行も出来たものではない。よろめくのは、私の力量不足なんかじゃない筈。
「ここが、私のターゲットね 」
ゆっくりと足を地につけて、そっと箒から降りる。それからぐるりと街を見渡した。星のような光が点々とあり、夜なのに闇のひとつも見えやしない。
「変なの」
それでも私の着地した場所は、建物と建物の間だ。暗いし辛気臭いし、このような場所を好んでいるわけではないが、また誰かに見つかることもないだろう。
無いはずだった。