ファーストキッスはレモン味!?

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6:たなか:2017/01/17(火) 22:13




この世界には、魔物なるものが存在する。

その魔物達は人間達が住まう地上の遥か下、別称ネクロポリスとも呼ばれる層に生息しているという。
魔物は人間たちに害を及ぼすとされているが、ネクロポリスから地上に至るまでには幾重にも重なる結界が貼ってあるため、魔物達は滅多に人間達の元に姿を表すことはない。
しかし、結界とは月日が経つごとに強度が弱まっていくもの。なので、ごく稀にその結界を一層、一層と破っていく強者もいるという。
そんな魔物を討伐するのが彼ら、ホスリア討伐隊、通称ホスリアの使命だ。

ホスリアには春波、夏綾、囁秋、吹冬、創英の5つの部隊があり、中でも創英は春夏秋冬(春波、夏綾、囁秋、吹冬をまとめてこういう)の内から精鋭を選りすぐった面子だけでできた部隊だ。
ホスリアへの入隊というだけでも非常に難しいことなのに、なんとうちの幼馴染5人は全員ホスリアの隊員に所属、中でも桐は史上最年少で創英部隊に所属している。
ちなみに他の4人はミモザが春波部隊、アザミが夏綾部隊、外郎が囁秋部隊、黒曜が吹冬部隊だ。

それから申し遅れましたが、私の名前はユギ。

今まで一緒に過ごしてきたみんなの手伝いがしたくて、ホスリアのみんなが過ごす寮に住み込みで朝昼晩の食事作りや生活の補助を行うサポート班に所属している。
これでも試験内容は結構難しかったし、入隊後もサポート班の6人いる先輩達にはビシバシしごかれた。
まだまだ入って3年の若造だけど、気持ちは先輩達に負けないくらいあるつもり!!

「ユギ!よそ見しない………ってほら手ぇ切ってるじゃん!!このバカ!!」
「うっ…すみません」

………なんて考えてる側から鈴蘭さんからの厳しい叱咤と絆創膏が飛ぶ。いたたた。結構ざっくりだぞこれ。

金曜日の今日は隊員全員で集まって夕食を摂る日なので、私たちサポート班の7人+エリナちゃんの計8人は今日はせわしなく夕食の支度をしていた。

基本的にホスリアは年齢ごとに住む寮を分けているので、普段は私、桐、ミモザ、アザミ、外郎、黒曜、エリナちゃんの7人で寮生活を送っている。
エリナちゃんが来る前は、入隊後も入隊前と変わらない6人で毎日楽しく過ごしてきた。特に、二親のいない私たちはお互いが心の拠り所であり、それぞれみんなを家族のように思っていた。あ、別にエリナちゃんが来たから楽しくなくなったってわけじゃないよ?むしろ男所帯に華ができて嬉しいくらい。(私は女として見られてなかった。)

「ユギちゃん!!」
「?………エリナちゃん?」

向こう側からパタパタと駆けてくる足音が聞こえると思ったら、当のエリナちゃんだった。

「どうしたの?怪我?」
「うん。ちょっと切っちゃっただけ……全然平気!」

彼女は、どうやら休憩中だったようだ。
心配かけちゃいけないと察し、私は怪我をした左手を隠す。しかし、目ざといエリナちゃんにはすぐに見つけられてしまった。
肌を伝う血を見て、エリナちゃんが大袈裟に驚く。

「酷い怪我!どこが平気よ!」
「うぬぬ………」

私がサポート班にしては致命的な程に傷の手当てが下手くそなのは周知の事実。それは、絆創膏一つにしてもそうだった。いつもいつも傷の所にガーゼの部分を当てられないのだ。
観念した私は、エリナちゃんに左手を差し出した。


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