T章 <炎上マッチ 椿野優雅>
『近年増加傾向になりつつあるバイトテロ。果たしてその実態は……』
午後6時、椿野家のお茶の間にて。
徒然なるままに(要は暇だったのだ)俺はテレビのニュースを眺めていた。
「バイトテロか……くだらねーことする奴もいるもんだな」
俺はため息混じりに呆れると、親父も
「全くだ!最近この手の犯罪が増えてきてな」
と、声を荒らげ、憤りを隠せないようだった。
バイトテロとは、Twitter上にバイト先でふざけて撮った写真をアップすることだ。
主にバイト先のキッチンのシンクの中に入ってみたり、食器洗い乾燥機の中に入ったり、パンの生地で遊んでみたり……
そんな写真をTwitterにアップし、炎上を煽っていく。
見た人は不衛生だと感じ、その店に行かなくなる。
よって店の経営が破綻するという大事にもなってしまうのだ。
もちろん、写真をアップした当人は賠償金を払う事になる。
それ以外にも、会社をクビになったり会社に就職できなくなったり。
今後の人生に大きく影響が出る。
「この間もそのせいで何件か店が破綻してしまったんだ。全く……」
親父は歯ぎしりしながらテレビの画面を睨みつけていた。
この時の俺は、『見つけたら軽く炎上させてやろう』としか思っていなかった。