「僕、びっくりしたよ。あんなふうに叫ぶんだもん!」
厳粛な式で暴れ散らし、式場から追い出されたカノエは、不満を隠すことなく口を膨らませていた。
目の前ののんきそうな女々しい男にも、その周りの黙ったままの人間にも、殺意を含んだ視線を向ける。
___これからこいつらと行動していくなんて、考えらんねえ!!
ここは魔物討伐部隊の寮。
班員との絆を深めるという目的で、生活を共にするらしい。
一年経てば出て行くことを余儀なくされるが、カノエにはその一年が途方もなく長いように思われた。
カノエが苛立っているのは、自分が“α班”であるということだった。
魔物討伐部隊というのは、その年に新しく入隊した新人を10の班に分けるのだが、カノエ所属のα班は落ちこぼれが配属されるともっぱらの噂だったのだ。
大したことのない仕事ばかりが振り当てられ、大したことのない功績しか残せない。
自尊心の強いカノエには、とてもじゃないが耐えられなかった。
「なに、睨んでるのよ。あたしだってあなたたちとなんて嫌よ!!」
一人の少女が声を上げた。
綺麗、とは彼女のために作られたのであろう。
そう思えるくらいに、少女は美しかった。が、それ故、怒りを顕にする彼女は怖さを含んでいる。
みな、心の内には思うことがあった。
自分は落ちこぼれなんかじゃない、と。