「喧嘩はやめようよ。ね?」
女々しい見た目の男が仲裁に入る。
しかし、事態が収束するわけがない。
絵に書いたような険悪に、部屋はどんよりと重苦しい空気に包まれていた。
「女に魔物討伐なんか務まるかよ。」
カノエは吐き捨てるように言った。
少女の顔はみるみる赤くなる。
「男尊女卑とか、今時ありえない!あなた随分プライドが高いみたいだけど、まさか班長になるなんて言わないわよね?あたし、認めないから!」
「そのつもりだけど。それで、認めないってお前に何ができんだよ!」
少女が何か言おうとしていたが、一人の男がそれを静止して立ち上がった。
うおっ、とカノエは思わず、驚いた。
「なんで、こんなおっさんが!?」
魔物討伐部隊は、高校卒業してすぐの若者を採用してるはずだ。
「おっさんはないだろ。まだ21なんだけど」
呆れたようにいう青年は、少々大人びてはいるが年相応の見た目の長身痩躯の男だ。
「α班には、政府の人が班長として配属されるはずだよ。」
「げぇっ!?マジかよ!」
まずはその年齢よりも、その事実が重要だ。
カノエはすっかり自分が班員を統率するつもりでいたのだから。
「しかも、大ベテランの。すごい厳しい雷親父っていう噂。」
少なくとも、ここ数年はね。と少年は付け足した。
沈黙が流れる。
それぞれが、雷親父を頭に浮かべて、嫌そうに顔を歪めた。
その時だった。
見計らったかのように扉が三度ノックが・・・