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2:りんごの皮:2017/02/16(木) 23:24

『形あるものはいつか壊れるんだよ。それがたとえ、硬い硬い石でもね』

 祖母の言ったこの言葉は、覆せない絶対的な理論だった。
 元素が集まって個体が存在する限り壊れるものは壊れるのだ。
 
 なら、逆手にとって、形のないものなら永遠に存在させることができるのだろうか?


「いってきます」
 私は昨日、全然眠れなかった。悩んでいたのだ。
 まただ。
 あぁ、また模試の成績が下がってしまった。

 勉強をサボったことなんて一度もないし、正直言うと。
 周りの子の誰よりも勉強していると思っている、けれど……
 このままじゃ第一志望の高校に行けないや。

 私は祖母から受け継いだ蒼いブレスレットを握り締めた。
 サファイア、ラピスラズリ、カイヤナイトやソーダライト、タンザナイト……
 色々な石が連なった、蒼いブレスレット。
 唯一の祖母の形見だった。
「はぁ……どうしよう、おばあちゃん……」
 ため息混じりにつぶやいていると、

「清石さん!おはよう」
 背後から私の苗字を呼ぶ声がした。
「三上さん……」
 三上修二さん。
 私と同じ高校を志望していて、私と同じ塾に通っている。
 副生徒会長を務め、成績優秀、スポーツ万能。
 ……天は二物を与えたわけだ。

「……おはよう三上さん」
「昨日出た模試の結果どうだった?受かりそう?」
 何も知らない三上さんは、それが地雷だと知らずに率直に訊いてきた。
 多分三上さんはA判定で、内申点も効いて、面接も完璧なんだろうな。

「うーん、まぁ普通っていうか……いつも通りB判定だよ」
 嘘だ、私何言ってるんだ、本当はC判定なくせに!
「そっか、A判定まであと一歩だね!お互い頑張ろう」
「うん」
「あ、卒業式の合唱曲だけど、『旅立ちの日に』になったらしいよ」
「うん」
 三上さんとそんなことを話していると、いつの間にか学校の正門前だった。

「あ、僕生徒会の集まりがあるんだった。じゃあここで」
「うん」
 
 って私、さっきから『うん』しか言ってない!
 何か言わなきゃとか思ったけれど時既に遅し。

 彼は生徒会室へ消えていってしまった。


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