では早速。
【主人公視点】
ほんの小さな日常。そう。それだけあればずっと幸せだったんだ。眠い目をこすりながら朝、妹に起こしてもらって、朝飯を食べて、学校へ行って、帰ってからトレーニングして・・・そんな風にいられればよかったんだ。
―なのに。日常は奪われた。
「畜生ッ・・・」
俺は、雨が降っている大都会の道路の真ん中に倒れながら小さく呟いた。普通なら車の餌食だろう。でも、もう車は走っていない。割れた道路、落ちている瓦礫、倒壊した建物。9人の人間が。この大都会を破壊していった。俺の家も壊された。妹も死んだ。もう誰もいない。俺には何もない。着ている制服以外は。精々言えば親から代々受け継がれてきた刀くらいだ。
「寒い・・・」
雨の中、半袖の制服なら寒いに決まっているけれど、言葉に出さずにはいられなかった。
「寒いのか」
俺の後ろから、声がした。俺は振り返ると、その人は、白い肌、黒と白の混じったオールバックの髪、黒いコート、首からさげている水色のロケットペンダント。
「こんな雨の中じゃ、寒いですよ」
「そうか」
「貴方は、逃げようと思わないんですか?こんな滅んでいるような町から。」
「町を破壊した奴らを殺すからな」
殺す・・・そんなセリフ聞いたの何年ぶりだろうか。殺すなんて言う人がいないのが当たり前なほど平和だったからな、と思い出す。
「じゃあ、俺も付いて行っていいですか」
自分でも、は?何言ってんだ。としかいえない言葉だった。でも、俺は言いたかった。
「妹を、家族を、殺した奴を、倒したいんです!」
「そうか・・・ならお前には何かいるな。」
と言って、その人は、俺の頭に触れて、何か唱えた。よくわからない言葉だったけれど、俺の脳内には、流れ込んでくるものがあった。
「これでお前の能力は決まった。一つ聞いておくか・・・お前の名前はなんだ。」
「関原・・・晃。(せきはら こう)」
「晃か・・・いい名前だ。俺の名前も教えてやろう。俺の名前は【杉原 刃】(すぎはら じん)」
「よろしくお願いします。杉原さん。」
俺は握手をするために手を出した。杉原さんは手を出して、俺の手を握ってくれた。その手は、暖かく、そして強い人の手だとわかった―。