一話(元々の方からコピペ)
「ブラックコーヒーを一つ、ミルクと砂糖はいらない。」
少年はそう言って万札をカウンターに置いた。
それを見て少女は答える。
「それで本当に、よろしいでしょうか。」
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レンガを基調とした洋風な街並み。
その中心の広場の十字路を曲がったところにその喫茶店はあった。
そこの店の手伝いをしている少女は、たくさんいる客の中で、一人の少年を見つめていた。
少年というより、青年に近いだろうか。
ツヤのある緑色の髪の毛が特徴的だが前髪は長く、そのせいで目元は見えなかった。
手のひらサイズの手帳を手にコーヒーを少しずつ飲んでいる姿が見えた。
少女はレジを先ほど青年が出した万札をもう一度見つめた。
元はと言えば、ここは不思議な店だ。
青年が先ほど頼んだコーヒーに値段は無い。
ここに来る人々…いや、冒険者は懐にある金から思い思いの値段を出していく。
旅立って間も無い冒険者、冒険慣れした冒険者、出すお金で大体の身寄りはわかる。
だけど、そのお金は高くとも700円程度で。
万札を出す物好きはほとんどいない。
あの人は、何者なのだろうか。
そう考えたとこで少女の想像は終わった。次の客だ。
そもそも青年がそのお金を自分の好意で出しただけであって。
別にそれに関して、多いやら少ないやら言う資格は無い。
次に来た客は五百円を少女に手渡し席へ行った。普通はこんなものだ。
少女はレジへお金を入れた。
おそらく、ここまで来て疑問に思った人がいるのでは無いだろうか。
こんなゆる〜い喫茶店がどうやってお金を儲けているのか。
実はこの喫茶店は、旅をする冒険者たちの集う喫茶店なのだ。
ここに来た冒険者たちは、ここに滞在するの仲間(パートナー)と呼ばれる機械が必要になる。
その仲間(パートナー)。少女もその一人だ。
冒険者たちはここで働く少女の中から、自分と相性のいいの仲間(パートナー)を選んで共に冒険をする。
仲間(パートナー)としての仕事が無いうちは、こうやって喫茶店で働くことになる。
少女が以前仕事をしたのは、つい最近のことだった。
「ちょっと、そこの君。」
突然肩をポンポンと軽く叩かれ振り向くと、そこには見慣れた笑顔があった。
「何でしょうか、マスター。」
少女はコーヒーを準備しながら片手間に答えた。
「仕事だよ。ご指名でね。」
「指名?」
指名というのは珍しいことだ。冒険者と仲間(パートナー)。
二人は仕事上の関係でしか無い。
冒険者が旅立てばそこで終わり。二度と街に戻ることは無い。
と言っても、仕事は仕事だ。少女はエプロンを外し。
「はい、今行きます。」
作っていたコーヒーをカウンターに置いて、新しい雇い主の元へ急いだ。
何かいい日になりそうだ、そんな予感があった。