君はカイワレ、ぼくはもやし

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3: さくら苺*:2017/05/20(土) 04:11


もやしの僕を外につれ出してくれた人が居た。
名前も年齢も知らないけど、その子は優しく土の中から僕を救い出してくれた。
初めて日に当たった僕は、その眩しさと圧倒的な力に気持ちが悪くなった。初めて感じたねっとりとした熱気に、息が詰まりそうになった。

「大丈夫?」

その子は優しく問い掛けてくれた。
何て答えればいいのか分からない。カイワレの君にはもやしの僕の気持ちなんて分からないだろう、と内心腹が立っていたけど、何故か別の言葉が出てきた。

「こんなに優しく接してもらったのは初めてだったので、驚いただけです」

自分でもびっくりだ、まさかこんな言葉が出てくるなんて。
不意に出てきたってことは、少なからずそう思っていたってことなのか。
確かに助け出してもらったのは初めてだったし、日の光を浴びたのも初めてだ。

「あなた、今までどれだけ見捨てられてきたの?」

「分からない。けど、母さんも父さんも顔を覚えていないし、引き取ってくれた親戚には……」

何話してんだ。頭が混乱してるのか。

「その怪我、その人に?」

「……どうだかね」

一生背負い続けることになった怪我も、今では土に潜り込んでいた言い訳に出来るからいいんだけどね。

「悲しいひとだね」

その子は泣きながら言った。
他人事で泣ける人が居るんだ。

「きみもきっと、カイワレになれるよ。
人の優しさに触れていけば、土の外でも生きられるようになる」

「優しさ?」

「きみ、今までずっとひきこもってたんでしょ。だから人の優しさを知らないまま、人の醜い部分しか知らない人生を送っていたの。
でも大丈夫、きっとこれからは__」

幸せなカイワレになれるよ。


       -end-


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