1.
「え、私、バリトンサックスなんですか?!」
今日は、念願の楽器発表の日。
私、第一希望、クラリネットで出したのに。
低音の、地味で目立たない、あのバリトンサックスだなんて……。
とは言えず。
目の前にいる先生が、書類を見ながら私が選ばれた理由を口にした。
「理由は、ずばり、身長です。」
私は165pある。女子の中では高い方だ。
せめて、「前にうまく吹けていたからです。」とか言うべきじゃないですか先生。
そうツッコみたい気持ちをぐっと抑えて、私はお得意の由湖スマイルを先生に浴びせた。
「やったぁ!頑張りまーす!」
小学校のときに演劇部に入っていただけあって、私は演技がうまかった。