新章 名前
黒色の、艶やかな髪の持ち主の少女は、その長いまつげを伏せた。
「ごめんなさい……」
「もうっ!役に立たないわね!」
声の主は、イライラと言った。
声の主は、茶髪を弄りながら、ネチネチと少女を苛める。
「そんなのだから、名前を与えられないのよ。」
この世界では、大きな働きをした者にだけ、名が与えられる。
少女は、この城の城主の娘の侍女だ。
「はぁ。もう、使えないんだから。せめて、私の髪をとかしなさい。」
「はい、お嬢様。」
少女は、娘のお気に入りのくしを取り出す。