老水夫行

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7:ひの:2017/05/18(木) 01:38

 水夫は急に心臓が止まったみたいになった。鬼の話を聞いているうちに、魂の記憶が蘇った
のである。
 水夫には見えた。九九九人の自分が。それぞれ、悪くない人生を送っていた。ある人生では、
お金持ちになった。ある人生では、立派に悟りを開いた僧だった。ある人生では、田舎でこじんまりと、
幸福に暮らしていた。
 しかし、どういうわけか、どの人生でも、最後にこの湖にくることになり、鬼が現れて、この湖に突き落とされる
ことになるのである。
「そして、今度も、俺を殺すのか……」
 老水夫は、やや観念したように言った。


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